目的
私がよく実施するCFDでは、多くの場合は多数の相が含まれており、反応・相変化・化学種(成分)の物質移動現象もしばしば有しています。従って、既存のOpenFOAMソルバーでは対応できないあるいか最初対応てきるが解析の複雑さの進展につれて対応できなくなるのはほとんどです。また、それぞれの既存ソルバーは使っているケースファイルの形式もまちまちであり、ソルバー換えるたびに、条件の設定し直しも必要となるます。これらの理由で、OpenFOAMを様々の場面で自由に使えるのは難しいと実感しています。統合的なソルバーが必要と考えました。
目的統合的非圧縮性ソルバーの開発
以上の課題を解決するため、私は2011年から約2年をかけて、非圧縮性流れを対象に統合的なソルバーを作成しました。このソルバーを「ChASNp2Foam」と名付けました。ChASNp2Foamでは、非圧縮流体(厳密に言えば、弱圧縮性も対応可能)の殆どの現象を解くことができます。
下表にChASNp2Foamの機能と商業汎用ソフトFluentとの比較を示します。
表1 ChASNp2FoamとFluentとの機能比較
圧縮性の扱い・DPM法を除き、
ChASNp2FoamはFluentとほぼ同じ機能を持っていることが確認できます。従って、このソルバーでは主に以下の現象を解析することできると考えます。
- 単相流動解析(管内流れ、ガス拡散、温度拡散など)
- 気泡塔(反応・ガス吸収を含む、固気液三相も可能)
- 流動層
- 撹拌槽(ガス溶解)
- 津波、スロッシング、気液分離装置
- CHT(固体と流体間の共役熱伝達)
また、Fluentではできない多流体モデル(MFM:Multi-Fluid Method)とVOF法(Volume of Fraction)をハイブリッドさせることで、多相流ではよく見られる小気泡から構成される小スケール気液界面と大気泡や液面などの大スケール気液界面を同時捕らえることができます。このハイブリッド手法は神戸大学の冨山教授(1)が提案したものであり、Np2モデルと名付けられています。従って、この新たに開発したソルバーを「ChASNp2Foam」と言う名前にしました。
図1にChASNp2Foam解析結果の一例を示します。ChASNp2FoamのHybrid手法による解析では、小さい気泡が大きい気泡との合体・乱れによって大気泡が分裂し小気泡になるなどの現象が見られます。また、他の解析例は参考文献(2)、(3)にも記載してあります。
図1 ChASNp2Foam解析例(Hybrid手法を用いた気泡流解析)
より多くの問題に対応できるように、現在もソルバーの拡張をし続けています。主な開発項目はDPM、FSI、および輻射となります。なお、圧縮性流体は専門外なので、恐らくは自分から開発しないと考えています。
但し、ChASNp2Foamは多数の問題が解けるようになったが、その反面ケースファイルはかなり複雑になり、初心者では使いにくい状態となっています。従って、現在SALOMEをベースにGUIを作成する予定も立っています。
参考文献
(1)島田、冨山ら, 化学反応・ガス吸収・熱輸送を伴う気泡塔内気泡流の数値解法, 化学工学論文集, 第31巻, 第6号, pp.377-387(2005).
(2)Z.ZHANG, M. MAEKAWA, Implementation of an Euler Multiphase Solver Based on OpenFOAM® for Bubble Column Reactor Design, Open Source CFD International Conference 2012, London, UK.
(3)M. MAEKAWA, Z.ZHANG, Hybrid Multiphase Solver Based on OpenFOAM® for Bubble Column Reactor Design, Open Source CFD International Conference 2013, Hamburg, German.
以上です。